自己破産申立てを検討している人にとって、免責許可がおりるまでの申請中の生活ではどう過ごすことになるのか、以前の生活からどう変化するのかなど不安に感じる人も多いのではないでしょうか。
実際に自己破産を申立てする場合、場面によって生活に制限がかかることは事実であり、無事に自己破産を完了させるためには押さえなければいけないポイントです。
この記事では、自己破産申立てを決断してから免責許可決定までの間の生活で制限される部分や変わらない部分について解説します。
自己破産申立てを決断してからの流れと注意点
自己破産申立てを決断し、司法書士や弁護士に業務を依頼すると、原則として全ての債務の返済を停止します。
司法書士・弁護士はご本人から自己破産申立ての依頼を受けたことを債権者に通知します。
自己破産申立ては費用が30万円程度はかかることが多いので分割で支払っていくことが多いです。費用を分割で支払っている期間に提出にかかる書類を用意したり作成したりします。
期間は基本的に申立てに至るまで1年程度かかることが多いです。
その間に気を付けなくてはいけないことをいくつかご紹介します。
毎月の収入で生活を送れるようにする
どうしても多重債務に陥っているときは後払い、携帯電話の決済サービス等あらゆる手段で家計を回すことが多いため、人によっては毎月の収入以上に返済があるといった場合もあります。そのような状況下では毎月の収入だけで生活を送るのは難しい場面もあったと思われます。
しかし、自己破産申立てを決断することで、債権者への返済を停止したあとは収入の中で生活をおくっていく必要があります。それが出来ない場合、自己破産申立てによって免責を認めたとしても再度生活が破たんしてしまう可能性があるためです。
また、携帯電話やネットサービスの後払いもクレジットカードの立替金と類似した債務になることからこれらも停止する必要があります。
継続的に打合せを要する
自己破産申立てにおいては、「破産に至るまでの経緯」や「現在の財産状況、生活状況」を示す必要があります。また、先程も述べたように自分の収入で生活を健全に送っていくようにしなければいけません。債務の返済を停止する以外にも「携帯料金を見直す(先程述べた後払いを停止する)」や「不必要なサービスを解約する」「他に債務に当たるものがないかを確認する」等、全容の把握や生活状況の立て直しが必要になります。
そのため、定期的に司法書士との面談を要します。
面談では毎回以下のものを持参してもらうことになります。
□ 給料明細(本人・同居者)
□ 通帳(本人・同居者)
□ 家計表
※ほか、状況に応じて他にも書類をご準備頂くことがあります。
上記の書類で、健全に家計を営めているか、他に債務に当たるものがないか?などを確認していきます。
ギャンブル等の免責不許可事由にあたるような行為を慎む
自己破産申立てを依頼するということは、厳しい言い方をすれば、「約束通りに債務を償還できない」状態です。
そのような状態である以上、浪費にあたるような行為等、一般に免責不許可事由にあたるような行為は慎む必要があります。
自己破産申立てを依頼した後もギャンブルをしていたりすると、本当に経済的更生を果たすつもりがあるのか疑念を抱かれることになります。
他にも、携帯電話等の後払いサービスでの換金行為等免責不許可事由に該当する行為に及んでしまった場合にも同様です。
費用の積立てを怠らない
費用については、司法書士と相談の上で無理のない額で分割積立てしていきます。費用の積立てが履行されないと申立てに至ることが出来ません。
申立てまでの期間を過分に要してしまうと債権者から訴訟提起や差押え等を受けてしまいます。債権者から差押えを受けてしまうと「管財事件になる可能性が高まる」、「生活に支障をきたす」、「勤務先に発覚する恐れがある」など様々なリスクが高まります。また、費用の積立てが滞るのが長期間続くと司法書士の辞任事由にも抵触しますので注意が必要です。
自己破産申立て後の流れと注意点
自己破産申立て後の流れは、「管財事件」になるか「同時廃止事件」になるかで大きく分かれます。
同時廃止事件には通常「換価配当できる財産がない」場合に該当します。逆に「換価配当できる財産がある」場合には管財事件に該当します。
但し、財産状況的に同時廃止事件でいい案件でも、内容によっては管財事件として進行される場合があります。例としては「2回目以上の自己破産申立てであること」「免責不許可事由が著しい」といった場合です。
自己破産申立てにあたっては、同時廃止事件・管財事件問わず一般的に住所移転の制限があります。同時廃止事件であっても免責許可時に官報に住所を記載するため、報告する義務があります。他方、管財事件の場合は基本的には制限がかかっているので管財人に判断をゆだねられる場合もあります。(もっとも一般的に住所の移転については余程のことがない限りは認められるものと思われます。)
同時廃止事件の場合
申立て書の提出後、一定期間経過した後に開始決定が出されます。開始決定後は2か月程度の債権者の意見申述期間を設けられ、期間経過後に問題がなければそのまま免責が認められます。
ほか、追完・照会があれば開始決定前に求められますので開始決定が出るまではいつでも対応できるように準備しておく必要があります。一般的に裁判所の追完・照会の期限は1週間から10日で設定されることが多く、過分に時間を要してしまうと管財事件に回されたり免責不許可になる可能性もありますので、迅速に対応する必要があります。
札幌地裁の場合、令和元年頃までは審尋と言って裁判官と申立人の面談が行われることがありましたが、新型コロナウイルス感染症の流行が起きた令和2年からは弊所の案件では行われていません。新型コロナウイルス感染症の流行については既に終結していますが、今のところ弊所の案件では審尋は行われていません。
同時廃止事件の場合は開始決定後は申立人においては基本的に何もすることがないのですが、引き続き申立てまでの間に気を付けてきたことは免責許可まで履行していく必要があります。
管財事件の場合
管財事件の場合は開始決定の前に裁判所へ管財予納金を納める必要があります。管財予納金は最低20万円~で個別の事情に応じて裁判所がこれを決定します。
管財事件になることが申立て準備の前からわかっている場合は予め管財費用を積立ててから申立てします。管財費用がない場合は、一般的に6か月程度の猶予が与えられその間に積立てして納める必要があります。もし、その間に積立て出来ない場合は取下げして、管財費用を積立ててから再度申立てする必要があります。
管財事件では通常開始決定の前後に管財人と一度面談を行います。
その後は管財人が中心となって破産手続きを進行します。そのため、1回目以降がどの程度の頻度で何回面談するか、どういったことが求められるかは個別の事情により異なります。
その他、管財事件になると「管財人への郵送物の転送」が行われます。これは申立人の郵便物を一定期間管財人に転送して管財人がその中身を確認します。その目的は、「他に債権者がいないか」「他に財産はないか」を確認するためのものです。
従って、これらに関係のない郵便物については手続き中であっても基本的に申立人が返してもらうことが出来ます。
自己破産申立ての前後の生活で変わらないこと
自己破産申請中では、今ご紹介したような部分において生活に制限がかかりますが、以下の点においてはこれまでの生活から特に変わることはありません。
現在の仕事
基本的に欠格事由に当たらない場合は今の仕事を続けることが出来ます。
賃貸物件の契約継続・新規契約
賃貸物件に住んでいる場合、そのまま住み続けることは可能です。
かつては、賃借人が破産をすると賃貸人が解約の申し入れを行うことができるという規定がありましたが、その後の民法改正により、この規定は撤廃されました。そのため、破産したからといって、急に引っ越さなければならないということはございません。
ただし、もし家賃の滞納があった場合、その滞納した家賃も破産手続きに含まれ、免責の対象となりますので、その場合は別途の対処が必要です。
また、自己破産後も、新しく賃貸住宅を借りることも可能です。新しい住まいを探す際には自己破産申立てをしたことを伝える必要はありません。
ただし、自己破産から数年間は信用情報機関にその情報が登録されていますので、信販系の家賃保証会社を利用する場合には、審査が通りにくくなることがありますので注意が必要です。
解約返戻金が20万円以下の保険の継続
解約返戻金が20万円以上の保険に加入している場合、財産とみなされ強制的に解約されてしまいますが、20万円以下の保険については解約する必要はありません。
保険各種は申し込みの際、個人信用情報の照会は行われませんので、新規加入も問題はありません。
年金や生活保護の受給
公的年金制度の年金給付は、自己破産であっても原則差し押さえが禁止されています。そのため、自己破産申立てに関わらず、これまで通り受け取ることができます。また、自己破産申立てを理由として、年金の給付額が減額されることもありません。
また、生活保護の受給においても制限されることはありません。
自己破産申請中の生活で大事なポイント
自己破産申請中の生活では、これまで説明したように、今までの生活と比べて変化が生じます。そのため誰しも不安を覚える期間ですが、無事に自己破産を終えるために、以下のポイントを押さえることが重要になります。
裁判所や破産管財人の指示に従うこと
自己破産申立てにおいて、申立てを依頼した司法書士・弁護士、裁判所や破産管財人からの指示に従うことは非常に重要です。
手続きの中で依頼した司法書士や弁護士、裁判所、管財人から色々指示や質問されることがありますが、全てに理由がありますので、申立人としては、真摯に対応することが重要です。
今ある借金をすべて報告する
連帯保証人に迷惑をかけたくない借金や、親族や友人から個人的に借りた借金も含め、すべての借金を申告することが重要です。
自己破産の申立て時には、債権者全員の名前が記載された債権者一覧表を提出する必要があります。一部の債権者を除外したり、虚偽の情報を提供することは免責不許可事由に該当し、免責が認められなくなるリスクを高めてしまうため気をつけましょう。
財産を隠さない
自己破産申請の際、財産を正直に申告することが重要です。自己破産は、返済可能な財産を全て回収し、残りの支払いを免除する手続きです。財産を隠す行為は、債権者に適切な配当ができなくなるため、免責不許可事由に該当します。
財産を隠す行為には様々なものがあります。例えば、不動産や自動車の名義を変更したり、離婚の財産分与を利用して配偶者に財産を移したりすることです。さらに、申告口座以外の口座に現金を移したり、株式や投資信託で得た利益を申告しなかったりすることも含まれます。
また、財産隠しは詐欺破産罪に該当する可能性があり、重い刑罰が科せられることがあります。故意でなくても申告漏れがあれば免責が認められないリスクがありますので、細心の注意が必要です。
無駄遣いをしない
先程も似たことを記載しましたが、浪費は控えることが重要です。
これは、経済的更生への意欲が不十分だと判断されかねないためです。
一部の債権者への返済をしない
自己破産申請中に、特定の債権者に対して自主的に返済を行うことは禁止されています。この行為を偏頗弁済(へんぱべんさい)と呼びます。偏頗弁済は、債務者が特定の債権者に対して借金を返済したり、担保を提供したりすることを指します。
偏頗弁済は、債権者平等の原則に反する行為です。つまり、自己破産手続き中に特定の債権者だけを優遇することは公平性に欠けます。偏頗弁済行為に及んでしまうと、最悪の場合免責が認められない可能性があります。
結論:自己破産申立ての手続き中でも日常的な生活は送れる
自己破産を申立てしてから免責が認められるまでの期間は、今回ご紹介したように生活にいくつかの影響がありますが、「大きなペナルティが課せられる」というイメージで身構えるほどではありません。
自己破産について少しでも心配なことがあれば専門家への相談をお勧めします
「自己破産をしようか考えているけど、何から始めていいか分からない」
「自己破産以外にも、できる債務整理の方法があるのか知りたい」
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