自己破産は、借金の支払いを免れることができる債務整理の最終手段です。
その分、自身の生活環境に制約がかかってしまうものであり、特に家族がいる人にとっては自己破産による家族への影響が避けられないので注意する必要があります。
この記事では、自己破産によって家族にどのようなデメリットが生じるのか、自己破産の特性を踏まえて解説します。
自己破産をすることで家族単位で生じるデメリット
自己破産をすることで、自分だけでなく家族にも影響してしまうデメリットとして、以下の事柄が挙げられます。
持ち家を手放すことになる
自己破産をする人の名義で持ち家を保有している場合、自己破産によって手放さなければいけません。
自己破産の手続きにおいて20万円以上の財産は、破産財団に組み入れられ、換価して配当するためです。
不動産(持ち家にして居住できるもの)がこの金額を下回ることはないと思われるため、事実上「自己破産申立てすると持ち家がなくなる」と言われます。
持ち家がなくなると、引越しをしなければならず、家族単位で住む地域や生活環境が変化してしまいます。
自動車を手放すことになる
自動車も同様に、20万円以上の価値が認められれば換価対象として財団組入となります。
自動車の場合、手放すことになってしまうのは以下の場合です。
⑴ 所有権留保がついているローンが残っている場合
ローン会社が所有者となっており、完済後に本人名義に変更する契約になっている場合、ローン会社によって引き上げられ、売却代金を残債務に充当されます。この場合はローン会社との契約に基づいてローン会社によって引き揚げられます。
⑵ 自動車の価値が20万円超えている場合
査定書を取って20万円を超えている場合は、破産財団に組み入れられます。
裁判所の運用によっては、初年度登録から●年以上経過していれば原則無価値と判断され、残すことが可能な場合があります。札幌地裁の運用では10年以上経過していれば査定は不要で価値を0円として計上できます。但し、10年経過していても価値が一定以上ありそうな自動車(例:高級車、外車等)は換価される可能性はあります。
家族が名義人の自動車であれば、引き上げられる心配はありませんが、手続きにおいて車検証の提出が求められることが多いです。
貯金などの現金がなくなる
自己破産では、99万円以下の現金は手元に残すことができます。
但し、裁判所によっては運用によって一定以上の現金を保有している者は換価、配当されるかは別にして管財事件に分類される可能性はあります。
総財産(預貯金や保険の解約返戻金などを含めた財産全体の金額)が99万円を上回る場合、99万円を超過した分の現金は全て破産財団に組み入れられる対象になります。
この手元に残せる最大99万円の現金は「自由財産」と呼び、破産者の生活を保証するための物です。
99万円以下の自由財産だけでは破産者が最低水準の生活を送ることができない場合、99万円の上限を超えた総額の財産を残してもらうよう申立てることができます。これは「自由財産の拡張」といい、裁判所に認められることで、破産後も多くの財産を手元に残すことができます。但し、これは例外的な対応ですので、基本的には難しいと考えたほうが良いでしょう。
なお、自己破産申立て前に意図的に家族に金目のもの(現預金含め)を渡して、「これは自分の財産ではない!」と主張しても通用しません。財産隠しと捉えられる恐れもありますので、絶対にしないでください。
保証人になっている家族に返済義務が生じる
自己破産をする際に家族が保証人になっている債権がある場合は、家族に返済義務が生じます。
家族の場合でもそうでない場合でも同じですが、通常、自己破産をすることによって保証人に一括請求されてしまいます。仮にその一括請求を、保証人も支払えない場合、保証人も自己破産などの債務整理を行わなければいけなくなることも十分に考えられます。
破産者名義の家族カードは使えなくなる
自己破産をした場合、自分の名義で発行したクレジットカードは強制的に解約となります。
これには家族名義で作成されたカードも含まれます。
普段からキャッシュレスでの支払い等に家族カードを使っていた場合、これらの支払いをすべて現金で行わなければならなくなり、生活に大きな制限がかかることになります。
保険が強制解約される
学資保険や生命保険など、解約返戻金が20万円以上ある保険は、全て解約し破産財団に組み入れられます。
自己破産の手続きでは、保険の解約返戻金も、自動車などと同じ「財産」として扱われるからです。
自己破産による子供の将来へのデメリット
小中高校生の子供がいる人が自己破産をする際には、以下のデメリットに注意しなければいけません。
学資保険の解約
先述のとおり、自己破産をすることで解約返戻金が20万円を超える保険は強制的に解約になります。学資保険もその対象です。
学資保険が解約になることで、それまで積み上げてきた子供のための教育資金が全て手元に残らず、子供の進学に影響が出てしまうおそれがあります。
同居家族に内緒で自己破産をすることはほぼ不可能
自己破産を進める際、その事実を家族から隠して進めることは一般的に難しいです。
自己破産の手続き自体が家族に直接通知されるわけではなく、また本人から家族に告知する義務が法律に明文化されている訳ではありませんが、同居している家族には、先程述べた影響の他に、裁判所に提出する様々な書類を用意する必要があり、事実上不可能と言えます。
ただし、特定の状況下では、家族に知られることなく手続きを完了させることも不可能ではありませんが、そのような場合は例外的な状況に限られるため、可能性があるとしてもそれに頼ることは推奨されません。
※現在、弊所では「同居者に内緒」での自己破産申立てはお受けしていません。
自己破産をしても家族や子供に影響がないこと
次の事柄に関しては、自己破産をしても家族や子供に直接的な影響はありません。
家族名義の財産
自己破産では、破産者本人の名義の財産が換価対象となるため、自動車や持ち家、保険などの名義が家族であった場合は、それらの財産は自己破産による影響を受けません。
ただし、先程も述べたように自己破産の前に財産を家族の名義に変更する行為は「財産隠し」と判断され、免責不許可事由に当てはまる可能性があるため注意が必要です。
信用情報
自己破産を行った人は、信用情報にその記録が残り、一定期間クレジットカードの発行やローンの契約が困難になります。しかし、この記録は本人に限定され、家族の信用情報には影響を与えませんので、家族に直接的な影響はありません。
子供の進学・就職
破産者本人は一定の期間において資格や職業が制限されますが、自己破産をした人の家族はそれらの制限を受けないため、家族の現在の職業や将来の就職に影響はありません。
結婚
自己破産をすることで、子供など家族の結婚に直接的な影響が出ることはありません。自己破産をしても戸籍や住民票などにその内容が記載されることはなく、自己破産によって家族の結婚に法的な制限や影響が及ぶことはないです。
自己破産による家族へのデメリットを最小限に抑えるためのポイント
自己破産では家族へのデメリットが発生することは避けられませんが、次のような方法やポイントを押さえることで家族へのデメリットを最小限に押さえることができます。
別の方法で債務整理を行う
自己破産以外に、個人再生や任意整理などの方法で債務整理を行うことで、自己破産による家族へのデメリットを抑えることができます。
・個人再生
個人再生手続きを行うことで、全てではありませんが、かなりの部分の返済義務が軽減される可能性があります。
もし住宅ローンの返済がまだ残っている状態であれば、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を適用することにより、住宅ローンを継続しつつ、それ以外の債務については減額してもらうことができます。
この措置により、引越しをせずに済むため、家族の日常生活や生活環境に与える影響を最小限に留めることが可能となります。
・任意整理
任意整理とは、借入金の返済条件について債権者と直接交渉し、返済期間を延長する分割払いへの変更や、利息の免除を受ける手続きのことを指します。
この方法では、返済の義務自体はなくなりませんが、どの債権者と交渉を行うかは自由に選択することができます。
例えば、自動車のローンをそのままにしておきたい場合は、車のローンに関する債権者とは任意整理の交渉を行わず、他の借入金に対してのみ任意整理を行うことが可能です。
さらに、家族が連帯保証人となっている借入金については、任意整理の対象から外すことにより、家族に与える影響を大きく軽減することができます。
財産の名義変更をしない
自己破産を申し立てる際には、財産に関して正直な申告をすることが非常に重要です。
自己破産のプロセスでは、一定額以上の価値がある財産を保持している場合、それらを手放す必要があります。
このため、自分の名義にある財産を手放したくないという理由で、財産の名義を家族に変更することで対応しようとするケースが見られますが、このような行為は財産隠しとみなされ、結果的に借金の返済義務からの免除を受けることができない「免責不許可事由」にあたります。
特定の債権者に偏って返済をしない
特定の債権者にだけ優先的に返済を行うことを「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼びます。
例えば、自己破産の手続きを開始する前に、家族への借金を返済したり、友人に対して価値のある財産や現金を特別に渡したりする行為が偏頗弁済にあたります。
破産のプロセスでは、原則として全ての債権者に対して財産が公平に分配されることが求められており、一部の債権者に対する偏った返済は許されません。もし偏頗弁済が発覚した場合、それは「免責不許可事由」に該当し得るため、注意が必要です。この原則は、債権者が縁故のある個人であれ業者である法人であれ変わりません。
自己破産のタイミングの離婚には注意
自己破産を行う際、所有する財産が売却されるリスクがあります。このため、自宅や自動車などの重要な財産を保全する目的で離婚を選択するケースが見られます。具体的には自己破産申請前に離婚し、その過程で配偶者へ財産を分与するという方法ですが、このような離婚には細心の注意が必要です。
離婚を利用して財産を保護しようとする行為は、自己破産の手続において「財産隠し」と見なされる可能性があり、その結果、自己破産の申請が認められなくなることがあるためです。財産を保護する意図がない離婚であっても、自己破産を検討している場合は、通常よりも多くの財産を分与することは控えるべきです。
※当事務所では離婚に関するご相談はお受けしておりません。離婚と法的整理が絡む場合にはお受けできない可能性があります。
専門家に相談する
自己破産を検討している際に、家族に与える影響をできるだけ少なくしたいとお考えなら、専門家への相談を強くおすすめします。
家族との関係性、保有している財産の状態、債務の詳細、そして返済が可能かどうかなど、様々な要素を考慮した上で最も適した対処法についてアドバイスを受けることができます。さらに、家族に知られることなく進めたい場合の選択肢についても、詳細な相談が可能です。
適切な自己破産をすれば家族の生活は維持できる
先ほどご紹介したように、自己破産以外の債務整理の方法を選択することで、自己破産による家族へのデメリットを減らす方法も考えることができます。
ただし、自己破産をすることで家族との生活が続けにくくなるということではなく、むしろ自己破産をせずに借金の返済に悩みながら家族と暮らし続けることの方がずっと苦しいかもしれません。
月々の支払いを免れることで、これからの自分の給料は全て家族との生活のために使うことができるようになります。デメリットを踏まえて、家族にとって良い結果となるかもしれません。
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