
「借金にも時効がある」ということはご存じの方も多いと思います。
民法第166条では次のように定められています。
1.債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1.債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
2.権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
また、消滅時効は期間がたてば勝手に成立するものではありません。民法第145条で次のように定められています。
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
法律の条文を挙げると何とも堅苦しくわかりにくいのですが、要するに、
「借金を返せという権利は5年(か10年)経てば時効だと言って返さなくてもよくなるけど、借金がなくなって得をする人(本人、保証人ほか)が時効だと言わない限り勝手に成立はしない」
ということです。(※裁判を起こされるなどしている場合は判決の確定日から10年)
現在借金がある方からすれば、「勝手に成立してほしい」と思うかもしれませんが、一方で時効は関係なく何十年たっても「借りたものはキチンと返したい」という人もいるので、そういった人の意向を無視するのは良くないという考え方によるものだと思われます。
ほか、時効が止まる(期間がリセットされる)こともありますが、今回は割愛します。
つまり、時効を完成させるには借りている側から貸している側に「時効を主張する」ということを伝える必要があります。
通知しないといつまでも借金は残り続けたままです。
通知しないことのリスクはあるのでしょうか?また、時効の通知はどのようにすればよいのでしょうか?
目次
時効援用通知をしないリスクとは?
先程も述べたように、時効が完成する期間が経過していても時効を援用しない限りは借金は残り続けます。
借金が残り続けるということは、いつか時効の期間が振り出しに戻るリスクがあります。
今回はこの点は深く扱いませんが、裁判を起こして判決等が出てしまうことで折角経過した時効がリセットしてしまうのは悲惨です。しかも、裁判であれば確定日から10年を要しますし、10年目前で再度裁判を起こすことも可能です。
相手次第では一生借金がつきまとう…ということにもなりかねません。
従って適切な時期に時効援用しておくことが好ましいと言えます。
時効援用通知はどうやって書くのか?
時効であることをどのように伝えるべきかは特に決まっていません。
「時効を援用したい相手に時効を援用する旨を伝える」だけです。
通知の方法が決まっていないのだから、対面でも電話でも良いですし、お手紙(封書、ハガキ)でもなんでも良いのです。
しいて言えば、「どの債権の時効を援用するか?」は伝える必要があるので、契約番号やカード番号、氏名、住所などは伝えるべきでしょう。
但し、上記の方法で共通して言えるのは「相手が時効を援用するという表示を受け取ったという証拠が残らない」ということです。
時効援用した証拠が残らないとなると、後でトラブルの原因になります。
「時効援用されていない」と向こうから言われてしまうと、援用した証拠を準備しないといけない…ということになりかねません。
そのため、司法書士が時効援用を行う場合には必ず「内容証明郵便」を使います。
内容証明郵便について
内容証明郵便とは?
内容証明郵便は「一般書留」で出した郵便物に同封した文書のコピーを郵便局が保管して、「いつ」「どんな文書が」「誰から」「誰に」出したかというのを郵便局が証明してくれるものです。
単に文書を書留などで出しても、「どんな文書が」を証明できません。
内容証明郵便の書き方は?
内容証明を郵便局で出すためには所定の様式(1行の文字数など)を守る必要があります。
詳細は日本郵便のホームページをご確認ください。
時効援用した後の対応について
時効援用は一方的に通知すれば足りるので、相手の承諾は必要ありません。
ということは、相手から何の反応も得られないことが考えられます。
法律上、「借金が時効で消滅した」となれば安心ですが、「本当に時効でいいのだろうか?」という不安はつきまといます。
また、時効が未完成と相手が思っている場合には「時効じゃないので払ってください」と言われる可能性があります。
簡単に反応別の対応についてまとめます。
反応がない場合
司法書士が時効援用をお受けした際には必ず相手方に以下の確認をします。
- 時効で債権は消滅したという認識でいいか?
- 書面で債権が消滅した旨記載あるものを貰えないか?
- 契約書など返却書類はないか?
自分で時効援用通知を送った時にはちょっとハードルが高いかもしれませんが、大事なことなので確認したほうがよろしいと思います。
反応があった場合
反応があるとすれば以下のようなことかと思います。
時効であることを認める趣旨の反応
時効援用を受け付けました、という連絡をくれる債権者も少数ながらいます。その場合は受け付けて対応終了してもよいですし、書面を求めるのも良いと思われます。(書面まで出してくれる先は稀です。)
時効ではないと主張する趣旨の反応
この場合は対応には細心の注意が必要です。動揺して返すという約束をしてしまったりすると、その約束が時効の期間をリセットする要因にもなり得ます。
なぜ時効じゃないのかを確認して、裁判で勝訴判決があるなどの理由であればその書面の写しを送ってもらうなどして確認するのがよいでしょう。
借金の時効援用をお考えの方へ
借金の時効援用はこの記事でもお伝えした通り自分でも行うことができます。
一方で、時効ではないというリアクションをされた場合など、自分で行うには少々荷が重い場面もあります。また、対応を間違えると時効がリセットされてしまうなどリスクも多いです。
司法書士や弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
弊所では過去の債務の時効援用については数多く取り扱ってきました。
初回のご相談は無料ですので、是非一度ご相談ください。