弊所が日頃債務整理業務を通じて得た情報を基に消費者金融業界・債務整理業界の最近の動向を全2回でお話しさせていただきます。
その2では、「総量規制の影響と最近新しく出てくるようになった債権者」についてお話します。
本稿に記載の事項は、一部当事務所の推察も含まれます。また、個別の業者名については一部開示していない部分もありますので、ご了承ください。
また、実際の債務整理による成果については個別具体的な事情によって異なります。詳しくはお問い合わせいただき、必要に応じてご面談を通じてお示しできればと思います。
総量規制と最近登場してきた債権者
平成中期は多重債務問題、一部業者の過剰な取り立て問題、グレーゾーン金利問題など消費者金融に対する世間の厳しい目がありました。また、多重債務においては営利を追求した業者による無茶な貸し付けも要因になるなど社会問題に発展しました。
この点については国も動き、グレーゾーン金利の撤廃(出資法改正)や総量規制(貸金業法の改正)で対応を進めました。
総量規制についてごく簡単に説明すると、貸金業法に基づく貸金業者は債務者の年収の3分の1を超える貸し付けを禁止する制度です。これにより主に消費者金融の貸し付けに制約が出来てしまいました。
一方で総量規制には抜け穴があり、多重債務問題の解決には必ずしもつながらないという側面があります。それは、銀行による貸し付けや信販会社等の立替払い(クレジットカードのショッピングも含む)には、これらの規制が及ばないためです。
こうした時代の流れから、債務整理で対象となる債権者に以下のものが含まれて来るようになりました。
⑴ 銀行系カードローン
銀行は近年の低金利やネット系銀行の登場による競争によって貸し付けが低迷しています。そのような情勢の中で無担保のカードローン商品は高利率であり魅力的な商品の一つです。大手の消費者金融や信販会社を保証会社とすることでリスクを回避して概ね14%程度の利率(一定額まで)で貸し出しをしています。
銀行による貸し付けは総量規制の対象外であり、年収の3分の1以上についても法律上は貸し付けすることが可能です。但し、平成29年に全銀協が申し合わせして過度な貸し付けをしないように取り組みはしています。
弊所で扱う事件でも、銀行系カードローンが債権者に含まれるケースも非常に多いです。
債務不履行になった場合は基本的に保証会社に代位弁済されるので、通常は消費者金融会社や信販会社と交渉することになります。従って、従前の業者とあまり変わりないことが多いです。
⑵ 携帯電話会社
携帯電話会社の債務は支払いできない通信料もありますが、後払いサービスで生活に必要な物品(食費、日用品費)を購入したり、場合によっては換金行為等に利用し支払い不能になるケースが増えています。
⑶ 後払い決済に特化した決済サービス業者
最近特に増えています。気軽に後払いサービスが利用できることからつい利用してしまう方も多いようです。上記⑵同様の利用目的であることが多いです。
⑷ 携帯電話会社や決済サービス会社等に関連する少額の貸金
携帯電話会社や決済サービス会社等、従前貸金業を営んでいなかった、新興型の貸金が最近増えています。「ちょっと手持ち現金が不足した時に」利用できる便利なサービスですが、貸金であることは従前からある消費者金融等と変わりありません。
⑸ サービサー(債権回収会社)、債権回収系の法律事務所等
サービサーや債権回収を受託する債権回収系の法律事務所は以前からありましたが、最近は⑵~⑷のように貸金や信販を本業としていない先の不良債権の回収を受託したり債権を買い取ったりすることが増えています。
回収代行の場合は当該債権者の意向がある程度反映されるため、債権者に準じた姿勢で条件を詰めていくことになります。同じようなケースで弁護士事務所、司法書士事務所が業務委託を受けて債権回収してくるケースもあります。
自社で貸付け等を行わない回収専門の会社ですので、債務不履行に陥った際の取立ては他の種類の債権者に比べて厳しい傾向にあります。一方で債務整理を受任した後の対応は会社によってまちまちです。中にはすごく厳しい先もありますが、概ね債務整理には協力的な印象です。
上記の債権者を相手とする債務整理について
基本的には従前の債権者と変わらないことが多いですが、携帯電話会社や決済サービス会社が債権譲渡や債権回収の依頼をせずに自社で交渉する場合は監理コストを考慮して短い期間での返済を求めてきたり、頭金を求めてくるケースもあります。
また、携帯電話会社等の債権は少額(10万円未満~30万円程度)に収まることが多く、長期分割が難しいケースもあります。
本稿であげた債権者は貸金を除けば、基本的には総量規制の影響を受けないことが多く、多重債務の一因になる場合もあります。