2020/08/07
新型コロナウイルスの影響により借金返済が困難な方へ(令和4年8月)
新型コロナウイルス感染症(以下,「コロナ」という。)の流行が始まって2年半が経過しています。
一時期ほどは「自粛」や「休業」というような経済的に直撃するような事象は減っているとはいえ,ご相談いただく中では「コロナの影響で借金が返せなくなってしまった」と仰る方も多くおられます。
弊所で頂いたご相談をまとめて,コロナが及ぼす借金の影響についてご説明します。
1.コロナによる収入の影響について
正規職員・契約社員(フルタイム)等で勤務されていた方で多いのが,「残業代の減少」,「賞与の支給額の減少・停止」,「雇止め(就労先の閉鎖,倒産含む)」があげられます。恒常的に残業が発生し,それが給与に占める割合が多かった方の場合,減収でローン返済が困難になったという事案があります。
パート・アルバイト等で勤務されている方は,「出勤日数の減少」や「雇止め」が多く,ほかに「子供の学校が臨時休校する」などの理由で出勤できず給与が下がってしまったという事案があります。
最大の問題点としては,これらの事象がコロナ流行初期から2年半もの期間継続していることがあります。社会全般を見れば平時を取り戻しつつあるような状況ではありますが,未だ収入については戻らない方もおられます。
2.コロナ禍での借金問題への対応について
住宅ローンについてはリスケ(一旦返済を利息のみとして返済月額を抑え,予定通り減らなかった元本部分については,収入が戻り次第再度返済計画を立てる)で凌いだ方もおられたようです。
その他のローンについてもコロナ流行初期については債権者側も柔軟に対応することがあったようですが,徐々に平時を取り戻している今は当時ほど緩く対応することは少なくなっているものと思われます。
「社会全体は若干平時を取り戻しているが,自分は全く戻らない」という方の中には社会福祉協議会の貸付金や消費者金融などの無担保融資を受けて一先ずこの状況をやり過ごしている方も居られるようです。
3.コロナ終結後の借金問題について
コロナについては何をもって終わりとするかは色々な見解があると思われますが,「コロナ禍が終結」したとしても一定数は元の収入が戻ってこないという場合もあろうかと思われます。また,コロナ禍で債務が減らなかった方や,債務を増大させてしまっている方がどのように解消していくのかという問題は極めて難しい問題です。
コロナが流行しはじめた令和2年と翌令和3年については自己破産の件数がそこまで増えませんでした。恐らく債権者側のリスケや社会福祉協議会の貸付,給付金等もあり,「特殊な社会」であったがゆえの救済措置に救われた側面もあります。
ただ,コロナが社会の表面上で終結した後については厳しい状況に陥るのではないかと思われます。これは,これまでリスケしてきた既存のローンが通常通り若しくは通常+遅れ分の取り戻しでの返済が再開し,同時にコロナ禍で増えた債務(前述の社会福祉協議会や,コロナによる困窮で借入れした債務)の返済も両立しなくてはならない状況になるためです。
今の状況を見て,「平時の返済になったとき」の収支の見通しが厳しいようであれば早めに手を打っていく必要があります。
4.アフターコロナを見据えた借金との向き合い方
諸外国の情勢を見ても,コロナ禍は確実に収束に向かって進んでいるものと思われます。そのため,現時点で債務が有る方は今一度ご自身の状況を良く把握しておく必要があります。
特に,債務はあるけど今は返済を免除若しくは減額している方については「元通りになったとして返済していけるのか?」を考える必要があります。以下の方については要注意です。
➀コロナ禍で社会福祉協議会や銀行・消費者金融等からの借入れが増えた
②現在最低限の返済をするにも窮しており,毎月借入れと返済を繰り返している
これらの方については,安易に現状を継続していると多重債務に拍車がかかる恐れがあります。多重債務解決の最終手段は自己破産ですが,特に住宅や自動車がある場合これらを処分する必要が出てくるので実生活においても極めて悪影響を受けてしまいます。
そのため,現時点で特に返済に窮する状態であると思えなくても,上記①,②の状況にある場合は一度ご相談いただければと思います。