これまで札幌債務整理相談センターは、たくさんのご相談をいただいてまいりましたが、その中でもマイホームをお持ちのご相談者のご依頼も数多く受けています。
本記事では、当事務所の取り扱ってきた実際の案件をベースにしながら、マイホームを持っている方がどのようにして債務整理を行い、その後どうなるのかについてなどを詳しく解説していきたいと思います。
【この記事を書いた人】
神沼 博充(かぬま ひろみつ)。札幌債務整理相談センターの相談・交渉・書類チェックを担当する司法書士。平成20年頃から債務整理に携わる大ベテラン。借金問題を解決するだけでなく、借金をつくらない暮らしを提案し、相談者と二人三脚で歩むことを心がけている。
内容まとめ
- 個人再生とは「圧縮前の借金については返済不能に陥る恐れ(≒自己破産の恐れ)はあるが、この借金を圧縮すれば返済していくことは可能である」ことを裁判所に認めてもらうこと
- 「新たに借入れをしないと返済と生活を継続できない」場合はいますぐに相談したほうがいい
- 住宅ローンが残っており、残債務額が自宅の評価額を「上回って」いる状態は、個人再生で借金返済と住宅ローンの支払いを両立可能
- 住宅ローンが残っており、残債務額が自宅の評価額と「同等」か「下回って」いる状態は慎重に検討し、場合によっては任意整理の選択肢がある
(1)マイホーム所有者が債務整理を決断するべきタイミングは「借入に頼らず返済と計画を維持できるか」
マイホームをお持ちの方は、一般的に住宅ローンを組んでマイホームを購入される方が多いので比較的安定した収入があることが多いです。
ただし、「安定した収入がある」ということは同時にカードローンやクレジットカードでの借り入れが出来る額も大きくなりがちです(厳密にはクレジットカードの立替金などもありますが、ここでは総称して「借入れ」とします)。
では、その借入の使途は何なのでしょうか。経験上よくみられるのは以下の項目です。
- 住宅ローンのボーナス払いが出来ず、その返済の穴埋めに借り入れる
- 生活費を充当するために借り入れる
- 奢侈品などの浪費のために借り入れる
結論からいいますと、マイホームを持っていて借入れがある方は、早めに返済継続の可否を判断する必要があります。
少なくとも「新たに借入れをしないと返済と生活を継続できない」状況に陥っている方は、すぐにご相談ください。
なぜなら、そういった状況になってしまうと遅かれ早かれ「債務不履行になる⇒マイホーム維持が困難になる」といった結末を迎えてしまうからです。
しかし追い込まれる前に早めに決断すれば、最悪の事態を回避することが十分にできます。
(2)マイホームの所有状況にとって債務整理方法は異なる
債務整理の方法は、マイホームの所有状況によって異なります。具体的には以下の通りに分類可能です。
いずれの場合においても、札幌債務整理相談センターは「住宅を手放さない(=自己破産を回避する)」ことを第一に考えながら全力でサポートいたしますのでご安心ください。
ケース1. 住宅ローンが残っており、残債務額が自宅の評価額を「上回って」いる状態
この場合の以下のとおりになります。
- 個人再生(住宅資金特別条項付き)の申立てを行い、
- 住宅ローン以外の債務を圧縮しつつ、
- 住宅ローンを契約通り支払い続けることで
- 債務の返済とマイホームの維持を両立可能とします。
また一方で、債務額によっては住宅ローン以外を任意整理することで返済と住宅ローンの両立を可能にする場合もございます。
ケース2. 住宅ローンが残っており、残債務額が自宅の評価額と「同等」か「下回って」いる状態
この場合、マイホームの価値から住宅ローン残債務を差し引いた額が「財産」としてみなされます。個人再生を申し立てする場合には、この差額が財産として計上され、財産と同額の再生債権を返済する(つまり返済額が増える可能性がある)ことになります。
したがってこのケースでは、総返済額(マイホームの価値と住宅ローンの債務総額)を検討したうえで個人再生の可否を決める必要があります。
ただし任意整理の場合は財産額を気にする必要がないため、履行可能であれば任意整理をすすめていくこともあります。
ケース3. 住宅ローンは完済済み、あるいは相続などでマイホームを得ており、自宅が純粋な資産になっている状態
この場合、マイホームの価値は全額財産として計上されます。よって「マイホームを含めた財産の価値>債務額」である限り個人再生のメリットがないため、基本的には任意整理を検討します。
ただし「マイホームを担保に住宅ローン以外の借入れがある」場合には、そもそも個人再生申し立てによってマイホームを守ることができないため、注意が必要です。
(3)個人再生(住宅資金特別条項付き)を申し立てる前に気を付けたいこと3つ
個人再生(住宅資金特別条項付き)は、上手くいけばマイホームを維持でき、かつ住宅ローン以外の債務を圧縮できる制度ですが、先述した内容のこと以外にも、以下の点に留意する必要があります。
(3-1)そもそも個人再生を申し立てることでメリットを取れるか、あるいは不都合が生じないか?
マイホームの価値とローンの残債の差額についてもそうですが、他の財産とされるもの(保険の解約返戻金、自動車、退職金等)を総合的に勘案して、個人再生をしていくべきか方針を決める必要があります。
(3-2)圧縮した債務と住宅ローンの返済をちゃんと両立できるのか?
個人再生の申し立てが認可されると、以下の両方を返済していかなければなりません。
- 約定通りの住宅ローンと
- 個人再生によって圧縮された再生債権
つまり個人再生の考え方をすごく簡単に言うと、
「圧縮前の借金については返済不能に陥る恐れ(≒自己破産の恐れ)はあるが、この借金を圧縮すれば返済していくことは可能である」
ということを裁判所の公権力でお墨付きを与えるものです。
ですから、借金を圧縮すればちゃんと返済出来るよということを明らかにしなければ、そもそも個人再生が認められないのです。
経験上、「個人再生計画が認可されないとマイホームを手放して自己破産せざるを得ない」という方が多いのが現状です。
だからこそ、再生計画の履行可能性を十分に高めておくことが極めて重要といえます。
札幌債務整理相談センターにご依頼をいただくご相談者さまは、大きく分けて2パターンあります。
- 「特に家計を見直さなくとも再生計画の履行が出来そうな方」
- 「家計を徹底的に見直さない限り履行可能性を示せなさそうな方」
相当な覚悟を持って望まないとならないのは、後者②のパターンに当てはまる方です。
このケースでは、個人再生を申し立てるまでの間に家計・生活全般を見直して再生計画を履行できる能力を示さないとなりません。
再生債権の総額は、住宅ローン以外の債務総額にもよりますが、基本的には最低でも100万円で、それを原則3年(事情がある場合には最大5年)で返済していく予定になっています。
もちろん札幌債務整理相談センターは、ご相談者がこの要件を満たせるよう親身に寄り添い、全力でサポートさせていただきます。
(3-3)個人再生が望ましくない場合はマイホームを手放すことも視野に入れる
個人再生が望ましくない理由は一人ひとり異なりますが、基本的には住宅ローン以外の債務につき任意整理を行うかマイホームを手放すかの検討に入るべきだといえます(他にも親族らに頼れそうな方が居る場合には援助を申し入れるなどの方法はありますが、本項ではそれらのことは前提とせずにお話をすすめます)。
任意整理の場合は、債権者にもよりますが3~5年で元金+和解日までの利息や損害金を支払うのが一般的です。
ですから、
【現在の債務額÷60】によって算出された返済月額が厳しいようであれば処理が難しいと考えられます。
※ただし状況によって全く異なる結果になる可能性もあります。債権者や債務の状況、取引状況、ボーナス払いの可否によっては解消し得るため、あきらめずに一度ご相談ください。
(4)マイホームを手放すなら精神的苦痛を抑える任意売却も選択肢に入れる
以上みてきたように、どうしようもない場合は最終的にマイホームを手放すほかないのですが、その際にも考えるべきことがあります。
それは任意売却によって手放す方法です。
一般的に住宅ローンが返済不能になると、住宅ローンの債権者が裁判所を通じて競売手続きを行います。
競売によって家を出ることになると、裁判所や裁判所に委託された不動産鑑定士が、マイホームの価値や状況を調べにやって来ます。そして競売によって落札されると、引っ越しのスケジュールなどは全て自分ではコントロールできなくなります。
周囲の目もありますので、競売は精神的な負担が大きいといえるでしょう。だからこそ、“もしも”の状況に陥ってしまった場合は、任意売却の手続きを行い、ある程度引っ越しのタイミング等もご自身で調性できる状態にしたうえで、人生のリスタートを切ることをおすすめします。
まとめ
①住宅ローンがある場合の債務整理の手段は個人再生か任意整理で基本的には検討するべき
②マイホームがある場合、返済不能に陥ると深刻な事態を招くため早め早めに債務整理を検討するべき
③個人再生をうまく活用できればマイホームを維持しつつ、住宅ローン以外の債務を圧縮できる
④自己破産せざるを得ない場合は任意売却で少しでもご自身の生活を崩さず立て直すことに切り替えるべき
いかがだったでしょうか。一言で債務整理といっても、一人ひとり状況にあった方法で整理していく必要があります。
当事務所は、マイホームを持っている方の債務整理のご依頼を数多く承ってまいりました。これまで培った実績と経験を活かし、ご相談者さまのお気持ちに寄り添いながら、最善のゴールを共に見つけていきます。
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